RevComm Tech Blog

コミュニケーションを再発明し 人が人を想う社会を創る

「個人の意志」と「企業の理念」をつなぐためにエンジニアリングマネージャーができること

この記事は RevComm Advent Calendar 2022 の 24 日目の記事です。

はじめに

2022 年 10 月に RevComm にシニアエンジニアリングマネージャーとして入社した樋沼です。前職ではエンジニア組織と兼務でビジネス組織の責任者をしていました。

エンジニア組織を内側と外側から見てきましたが、「エンジニアがイキイキしていないと IT 企業は成長しない」という当たり前のことを改めて痛感しています。そして、企業のミッションを実現させるために「個人の意志」と「企業の理念」をつなぐには何が重要なのか、ようやくわかってきました。

本日は、両者をつなぐためにエンジニアリングマネージャーとしてできることについて書きます。これまで私が経験したことの棚卸しをし、これから RevComm で取り組んでいきたい内容をまとめます。

クリアすべき 4 つのステップ

最初に「個人の意志」と「企業の理念」の間をつなぐための、私が考える 4 つのステップを紹介します。

4 つのステップ

これらは段階的にクリアしていくステップになりますが、離脱ポイントも多くあります。例えば個人のモチベーションが高まっても、集中できる環境が整わなければパフォーマンスが発揮できないどころか、モチベーション低下に陥ります。

また、全エンジニアのパフォーマンスが最高であったとしても、ビジネスに直結する開発案件を最適に割り振っていなければ、企業の業績が上がらないという結末もありえます。

後半の「3. 企業の業績向上」や「4. 社会への価値創造」は、エンジニアリングマネージャーが直接影響を及ぼすことは困難な領域ですが、ビジネス視点や経営視点を意識することで最後まで到達できると考えています。

1. 個人のモチベーション向上

まずは教科書的な話になってしまいますが、個人の「やりたいこと = Will」と「できること = Can」を確認し、「求められていること = Need」と突き合わせます。

Will

仕事に対する考え方や譲れない価値観は個人ごとに千差万別で、それは他人に否定されずに尊重されるべきコアなものです。最初にこの Will を丁寧にヒアリングして正しく理解することに努めます。 一括りにエンジニアといっても「技術を手段としてビジネスに貢献したい」や「技術の習得を追求したい」などタイプはさまざまです。RevComm では、等級制度のグレードを段階的に上がっていく過程で、エンジニアはマネジメント (M) かプロフェッショナル (P) でキャリアパスを選択することになります。

Can

次に「これまで何をやってきたか」「これから伸ばしたい強みは何か」を確認します。言語化できる顕在化した強みもありますが、ヒアリングの途中で本人が気付いたり、まだ潜在的である強みをマネージャーが感じ取ることもあります。 RevComm のエンジニアは、各プロジェクトに参画しつつ、職能(フロントエンド/バックエンド/インフラなど)チームにも所属する「マトリクス組織」で業務を行います。自分が伸ばしたい強みを磨くために、マネージャーに相談して新しいチャレンジに取り組むケースもあります。

Need

個人の Will と Can を踏まえた上で、ビジネスサイドからのタスク (Need) を割り振ることになります。ただ、チームがどんなメンバー構成であっても、タスク自体は基本的には変わりません。 ここでマネージャーは、個人の Will や Can に対する意味づけを添えてタスクを渡すことが重要になります。タスクの背景/目的/期待値/得られる経験値など、相手に合わせてタスクの渡し方を工夫することで、個人のモチベーション向上につなげることができます。

まとめ

やりたいことを周囲に話すと、誰かがそれを聞いて話が組織内を伝わり、巡り巡って自分の元に機会が訪れることがよくあります。たった数か月でも、RevComm 内で何人もの Will が伝わって実現されていくのを見ているので、改めて“意志の芽”を大切にしていきたいと思います。

2. パフォーマンス向上

エンジニアが高いモチベーションを維持したまま、期間中のパフォーマンスを高めるには、集中できる業務環境が重要になります。その際に、私は「フロー (Flow)」と呼ばれる心理状態に着目しています。

フローとは:時間を忘れるほど目の前のことに夢中になって、集中している状態
※世羅侑未『3 倍のパフォーマンスを実現するフロー状態 魔法の集中術』(総合法令出版、2019年)より

フローな状態になるための条件は以下の 5 つあると言われています。(諸説あり)

条件 1: 強い意志

大前提として、個人がそのタスクに取り組む意志が必要です。前述の「個人の意志」を理解し、そのタスクの目的や自分の成長にとっての意味合いを納得している状態を整えます。

条件 2: リラックス

業務に集中して取り組む上で、力まず平常心を保てる状態が必要です。まず、会社として働きやすい環境を提供できるかが重要ですが、RevComm ではフルリモート/フルフレックス制を採用しています。また、ミーティングは極力短い時間で終わらせるようにするなどで、業務に集中できる時間を確保できるようにしています。

マネージャーとしては、1 on 1 や懇親会で何でも話せる機会をつくり、心理的安全性が構築できているか、本音を話してくれているか声色や表情にも注意を払います。

条件 3: 手順の明確なイメージ

どこから手をつけていいかわからないタスクを渡されると頭がスタックしてしまうものです。頭の中である程度の業務フローが展開できれば、スムーズに取り組むことができます。

タスクの難易度は本人のスキルより少し高いハードル設定が望ましいため、どこまで問題を解きほぐした状態で相手に渡すか、マネージャーの見極めがポイントになります。

条件 4: フィードバック

業務に取り組み始めたら、その方向性やスピード感で問題ないか本人が随時確認できることが必要です。

定量的には、作業の進捗率が可視化されたり、顧客の利用状況など KPI がエンジニアでもすぐに確認できる環境を整えることができます。また、定性的には、1 on 1 で順調であることや改善点を伝えることで、安心して業務できる状態を維持します。ただ、マネージャーが改善点を伝える際は、答えを伝えるよりも本人に気付きを促すほうが効果的です。自分の口で対策を言語化できるように、壁打ちの相手になるのが理想的だと思います。

条件 5: ちょっとした混乱(緊張感)

条件 2 のリラックスは必要ですが、度が過ぎると緊張感のない惰性の作業時間になってしまいます。組織の中には「ちょっとした緊張感」があることが望ましいと考えています。 そのため、正論や理想論など思ったことは立場を越えて主張するように投げかけています。私もチーム内からの突き上げを受けて、自分のリミッターを外して行動できるように成長できたという体験があります。組織内で相互にプレッシャーをかけられる関係性が、ちょっとした混乱=緊張感をもたらします。

まとめ

パフォーマンスを向上させる上で権限移譲は重要な要素です。RevComm では、マネージャーはタスクの背景 (Why) と開発要件 (What) を明示しますが、実装方法 (How) はチームやエンジニアに一任されます。そして工数見積もりの結果、目標期日 (When) が要件と合わない場合は、優先順位の組み換えをビジネスサイドと調整したり、人員の増強などを全力で後方支援しています。

3.企業の業績向上

個人のパフォーマンスが最大限に発揮されたら、企業の業績に連動されるべきです。ただ、それは業績につながる業務がタスクとして割り振られ、適切な目標値を達成していることが前提となります。

企業の業績はPdM (Product Manager) や PMM (Product Marketing Manager) などビジネスサイドが担うため、エンジニア組織のマネージャーは基本的に責任の範疇外です。ただ、PdM や PMM に対して企業の売上予算がどう因数分解されビジネスサイドがどんな KPI として担っているか、また各開発タスクはどの KPI を期待されているかを確認することはできます。

PM (Project Manager)を含めたエンジニアリングマネージャーは、期初に行われるキックオフなどで共有される目標や KPI を確認するだけでなく、期中も PdM と密にコミュニケーションをとって、エンジニアの OUTPUT が業績につながることを意識する必要があります。

ちなみに、「戦略」と「戦術」のよしあしの組み合わせで、絶対に回避しなければならないパターンはどれだと思いますか?

最もよい状態は A であるのは間違いないですが、最も悪い状態は D でなく C になります。「よい戦略は正しい方向に動く」「よい戦術は遠くに動く」と捉えると、適切でない方向に遠く動いた分だけコストもかかり修正範囲も大きくなります。

まとめ

エンジニアリングマネージャーは貴重なエンジニアの工数に責任を持っている立場です。ビジネス面を任せきりにするのでなく、戦略や戦況を読み取り PdM/PMM と議論できるビジネススキルも習得することが重要だと考えます。

4. 社会への価値創造  

会社の業績が向上したらその規模の分だけ、社会への価値創造のインパクトが高まります。エンジニアリングマネージャーができることは、企業理念や経営の描くビジョンを自分の言葉で言語化して、相手の価値観に合わせて伝えることだと思います。

RevComm では『コミュニケーションを再発明し、人が人を想う社会を創る』という理念を掲げています。私は、企業活動におけるコミュニケーション不足やコミュニケーションロスを、定例会議、1 on 1、入社面接、カスタマーサポート、ユーザーヒアリングなど様々な場面で実感してきました。これらの内容が解析され相互の意思疎通が改善できたら、大幅な生産性の向上につながると確信して RevComm への入社を決めました。

また、『人が人を想う社会を創る』という表現も、“企業が社員により最適な環境を提供する”や“企業が顧客により便利なサービスを提供する”など、さまざまなシーンに広げて世界観を描くことができます。

時にはマネージャーも自分自身の Will と企業の理念を重ねてみる機会を持つのがよいと思います。

まとめ

企業の MVV (Mission/Vision/Value) は、日常の業務の中では忘れられがちです。ただ、壁にぶつかったときや企業内で対立軸が生じたときに、一度立ち止まって「この会社の存在意義は何か?」「自分は何をやり遂げたくてこの会社にいるのか?」を見つめ直すと解決策が見えるものです。 そんな時にマネージャーが「企業の理念」が実現したいビジョンを自分の言葉で具現化して、「個人の意志」の延長線上に重ねて示せれば、価値創造につながる推進力が生まれるはずです。

最後に

エンジニアリングマネージャーは、エンジニアが持つ能力を最大限に発揮させ、それを業績や企業理念の実現につなげる重要な役割を担っています。偉そうなことを語ってきましたが、私も自分で書いた内容を実行するように精進していきたいと思います。

この記事をきっかけに RevComm の企業理念に共感してくださった方がいらっしゃいましたら、ぜひご応募ください。

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