はじめに
RevComm でエンジニアリングマネージャーをしている服部 (@keigohtr) です。RevComm のエンジニア評価制度は2023年1月に改定しました。新制度を運用して既に1年が経過しました。この記事では、現在のエンジニア評価制度を紹介するとともに、評価制度の改定をどのようなプロセスで行ったのかについて紹介したいと思います。
タイムライン
- 2022年10月 - 評価制度改定 WG (Working Group) を発足。
- 2023年1月 - 新評価制度の導入。半期(1月~6月)のスタート。
- 2023年7月 - 半期(7月~12月)のスタート。
- 2023年9月 - 先期に寄せられたフィードバックをもとに改善。
- 2024年1月 - 半期(1月~6月)のスタート。
- 2024年3月 - 先期に寄せられたフィードバックをもとに改善。
現在のエンジニア評価制度
現在のエンジニア評価制度は「実績評価」と「行動評価」で構成されています。そして計画外の従業員の貢献を評価する「プラスワン評価」を設置しています。評価の割合は、実績評価:行動評価 = 1:1 で、プラスワン評価は補助的な位置づけとしています。
実績評価
いわゆる OKR や MBO と呼ばれるものです。期初に目標を設定し、期末に実績を書いたレポートを提出します。
行動評価
いわゆる360度評価と呼ばれるものです。IC (Individual Contributor) 職と EM (Engineering Manager) 職とで評価項目は分けています。
IC 職用の行動評価は RevComm の行動特性 を評価軸にしています。被評価者の同僚の IC 職を被評価者自身で3名以上(人数の上限なし)指名してもらい、彼らに被評価者についてのレポートを書いてもらいます。
EM 職用の行動評価は Google の Re: Work で定義された Manager Feedback Survey の項目を評価軸にしています。被評価者が管理する IC 職全員に被評価者についてのレポートを書いてもらいます。
プラスワン評価
実績評価で立てた計画以外に個人として出した成果を評価する仕組みです。プラスワン評価はあくまで補助的な位置づけで、実績評価と行動評価がメインの評価になります。プラスワン評価は、例えばPyConなどの社外カンファレンスでの登壇や15%ルール (=RevComm 版の20%ルール) で出した成果を評価します。
どのようなプロセスで評価制度を改定したか?
最初は現場からの声
当時の評価制度について疑問を持つメンバーの声がちらほら slack に上がっていました。評価制度についての課題感はトップマネジメントも認識していたところだったので、現状把握に乗り出しました。具体的には、各チームのリーダーに依頼して所属チームでワークショップを開いてもらい、現行の評価制度の課題について議論してもらいました。そして、集まった声の中でも課題感が大きかったキャリアラダーの改定が決まりました。
Working Group の立ち上げ
キャリアラダーを改定するにあたって誰がそのプロジェクトをリードするかを決める必要があります。ありがたいことに今回は私に任せてもらえることになりました。
私が最初にしたことは、WG (Working Group) を立ち上げることでした。具体的には以下のことをしました:
- WG の参加者を募った。
- WG の活動の目的とスコープを決めたドキュメントを作成した。
- WG の定例会議を設定し、議事録を作った。
- WG の活動を公開した。
WG を運営する上で意識したこととしては:
- WG の目的を明らかにし、やることとやらないことを明確にする。
- 活動はオープンに行い、透明性を高く保つ。
- 意思決定者を明らかにし、効率的な進行を行う。
- 定例会議では報告をメインにし、議論は定例以外で必要に応じて行う。
- 定例会議ではアクションアイテムと担当者を決める。
この仕組みはうまく機能し、キャリアラダーの改定活動は順調に進行しました。
評価制度の改定も WG で担当することに
キャリアラダーは人事評価でも使っていたので、キャリアラダーの改定は評価制度にも強く関係します。WG が活動を開始して1.5ヶ月経過したタイミングで、マネジメントから評価制度の改定を WG の活動のスコープに含めるように依頼がありました。
WG 発足から3ヶ月で新評価制度が制定、運用開始
あらためて振り返ってみると、変化が早いですね。
評価制度を改定する上で必要なことをまとめると:
- 優れた評価制度を設計すること
- 優れた評価プロセスを設計すること
- 関係各所から承認と理解を得ること
優れた評価制度を設計すること
冒頭のエンジニア評価制度に至るまでにしたことをまとめると:
- 現行制度の課題(=現場の声)を整理した
- 現行制度を設計した意図を上位マネジメント層からヒアリングした
- 古今東西の評価制度を調査した
現場の声は大事です。改定作業は課題を元に行う必要があります。当時の評価制度の課題については、本記事の目的から外れるので今回は割愛します。
「現行制度を設計した意図を上位マネジメント層からヒアリングした」理由としては、評価制度というのは会社の文化に紐づく必要があると我々は信じたからです。RevCommが大事にしたい想いだったり、マネジメント層がエンジニア組織に根付かせたい文化だったりが、評価制度に反映されている必要があると我々は考えました。
関係各所と協力し、最終的に冒頭に述べた成果物が出来ました。
優れた評価プロセスを設計すること
評価制度はできる限り少ないコストで運用可能でなければなりません。やったこととしては:
- 評価ガイドラインを作成した
- 人事評価システム (当時は HRBrain) を設定した
- フィードバックフォームを設置した
WG で評価ガイドラインを作成しました。適切なドキュメントの存在はいつでも重要です。最終的には24ページにもおよぶドキュメントを作りました。
また、WG で人事評価システムの設定も行いました。当時、RevComm では人事評価システムに HRBrain を使っていました。新評価制度を導入するにあたって、人事から HRBrain の管理者アカウントをもらい新評価制度の設定と試験を WG で行いました。この理由としては、優れた評価制度を設計できたとしても、人事評価システムで実現できない、あるいは実現できてもメンバーの作業負荷が高ければ、評価プロセスは組織に根付かないと考えたからです。
最後に、評価制度を継続的に改善できるようにするため、評価制度に対するフィードバックフォームを設置しました。フィードバックは常時受け付けるようにして、フィードバックが来たら WG で議論するようにしています。
関係各所から承認と理解を得ること
承認や理解を得る必要があるステークホルダーは:
- 上位マネジメント
- 人事
- 現場のマネージャー
やったことは対話です。
現状の課題と新制度での変更点を簡潔に述べ、質疑応答の時間を長く取りました。頂いたコメントやフィードバックを WG に持ち帰り、評価制度に反映しました。
評価制度の継続的な改善
制度の改定は実施したら終わりではありません。課題を探し、継続的に改善する体質が作れれば、従業員にとってもマネジメント層にとっても利益があります。
具体的には、上で述べた「評価制度フィードバック」のフォームに寄せられたコメントへの対応をしています。WG の運用としては以下を行っています:
- 閑散期は WG の定例会議の開催頻度を減らす
- 寄せられたフィードバックのうち改善が必要な項目がある場合、 WG の定例会議の開催頻度を増やす
新制度導入 (2023年1月) から現在 (2024年3月) までに WG が行ったこととしては:
- 評価ガイドラインの充実
- 理解を深めるための説明会の実施
- 人事評価期間の見直し
- 部門間での評価キャリブレーション会議の設定
そして現在はキャリアラダーの再改定を行っています。
おわりに
本記事では RevComm のエンジニア評価制度の改定について紹介しました。現在の評価制度もまだまだ改善できる点はありますが、制度の継続的な改善をできるプロセスを組織に作ったことは非常に大きい貢献だったと思っています。今回の活動は非常に多くの関係者の方の協力によって実現しており、RevComm はこのような協力体制があるということで非常に誇らしく思っています。